ニセコ蒸溜所に行ってきました

NISEKO Distillery

みなさん、こんにちは、好奇心旺盛なバーテンダー。鎌田真理です。先日オープンしたての新しい蒸留所ニセコ蒸留所を訪れたので、そちらの情報をシェアさせていただきます。

ニセコ蒸溜所と八海山

2021年10月1日グランドオープンした北海道のニセコ蒸溜所。世界的に有名なスノーリゾート地ですよね。北海道では、すでに有名な余市蒸溜所(1936年~)、比較的新しい厚岸蒸溜所(2016年~)に次ぐ、三つ目のウイスキー蒸溜所になるのでしょうか?素敵な場所なので、この開業の情報を知った時に、是非訪れたいと思ってました。

そして、場所だけでなく、もう一つ興味を持って訪れたい理由があるのです。それは、あの新潟県南魚沼市にある八海醸造が始めたのですよ。もう、素敵すぎます!

私は以前、とあるバーのカウンターで一人で飲んでいた時のことです。お隣にいらっしゃった方と話をしていて。。よくよく伺うと、八海醸造の南雲社長だったのです。その縁もあり、新潟の八海醸造には2回ほど伺い見学をさせていただきました。

という、縁がありましたから、これはニセコに行かねば!と言うことだったのです。

ニセコ蒸溜所見学

看板も素敵なNISEKO DISTILLERY

 見学(90分)は予約制です(動画の撮影はNG)。時間になるとまず、ノンアルコールのウェルカムモクテル。八海山の甘酒にレモンを加えたフレッシュな味わいのモクテルでした。

original welcome mocktail

館内に入ると、バーカウンターから、ショップ、蒸留機まで一望できます。最も特徴的なのは、木をたくさん使用している蒸溜所。

ニセコ蒸留所のポットスチル(フォーサイズ社)

 ニセコ蒸溜所の概要説明が終わると、早速施設内に入って行きます。

“ohoro” GIN オホロジン

ジン用のホルスタイン社のハイブリッド蒸留機

まずは、ジン“ohoro” GINの生産のお話。

 「ohoro(オホロ)」という名は、アイヌ語で“続く”を意味する言葉。ニセコの地で生まれたジンが多くの方に親しまれ、未来永劫続くように、という願いが込められているそうです。

 単式蒸留と連続式蒸留を兼ねそろえた、ハイブリット式蒸留機。ニセコ蒸溜所ではジンを作るのに、右側の単式蒸留機を使用している。ボタニカルとアルコールを漬け込み、翌日蒸留。一度の蒸留で500Lを作成し、アルコール度数70度。加水47度のジンを。銅製。ガスを使用した蒸気で熱を加えている。ジンはウイスキーと違って樽熟が不要だが、蒸留したてはカドが立っていると言うことで、一週間から数週間タンクの中で寝かせてからボトリング。として仕上がったのが「ohoro GIN」。こちらは10月1日より実際に販売されています(当面はニセコエリアのみ)。

 ボタニカルはジンになくてはならない、ジュニパーベリー、そして、オリスルート、リコリスルート、アンジェリカルート、コリアンダー、カモミール、5つの柑橘類グレープフルーツ、ゆず、オレンジ、ライム、レモンのピール。これらは一晩漬け込まず、フレッシュのピールをバスケットに入れてフレーバーを付ける手法をとっている。そして、ニセコらしさということで、自社栽培しているヤチヤナギ(蝦夷山桃)、ニホンハッカ(ホクシン)計13種類を使用。

Botanical

今後はラベンダーなど、ニセコ蒸溜所らしいボタニカルを変えて商品化される予定。

次はウイスキー

malt

100%イングランド産のモルト大麦を使用。ノンピート。1トンの大麦麦芽で500L のニューポットが出来上がる。

粉砕機

粉砕後、殻を残した状態で粉砕。殻が糖化の際のフィルターになるように。

粉砕前(左)と粉砕後(右)

②マッシュタン60度の仕込み水で麦汁を作成。その後濾過する。搾りかすは飼料として使用。

マッシュタン

③木桶にて発酵を行い、アルコール度数7度のもろみをつくる。

木桶下から
木桶上から

蒸留。ポットスチルにて2回蒸留、5000Lのもろみが一回目の蒸留で2000L、20度。二回目の蒸留が500L、65度のウイスキーが出来上がる。

初留釜
再留釜

 粉砕から蒸留まで7日間。そして、3年と熟成。貯蔵庫はニセコの自然で育ませたいということで、あえて空調のない貯蔵庫。

樽貯蔵庫
様々な樽に熟成中のウイスキー

熟成。5種を使用しています。アメリカンオーク新樽日本製、アメリカのバーボン樽、スペインのオロロソシェリーの樽500kg、フランス酒精強化ワイン使用後樽、バーボン樽をホグスヘッドに組み替えたもの。5月から蒸留したものが全て入っている。

バーボン(ワイルドターキー)の中古樽

 合計500樽が収納できる倉庫で、三年で貯蔵庫がいっぱいになる計算。

3年後に樽で一杯になる貯蔵庫

 蒸留所見学のあとは、実際に作られたウイスキーのテイスティング。といっても、樽熟成する前のニューポット(加水前)の貴重なものをテイスティングすることができました。透明な液体ですけど、すでにウイスキーのモルトの香りが漂います。これを数年熟成させたら、どのように変化するのだろうと想像しながら、味わいました。

樽熟成する前のウイスキーの赤ちゃん、ニューポット。
販売されていないウイスキー。

 また、有料で他のものもテイスティングできます。私はこれまた小売りでの商品でない、ウイスキー。米と麦芽を使用したウイスキーをいただきました。米を使用したウイスキーは初めていただきました。

バーとポットスチル

 実際にウイスキーは熟成に3年以上かかるため、発売は2024年以降の見込みらしいので、ウイスキーを飲んだり、購入したりはできないのですが、数年後にまた訪れる理由ができたので、その時まで楽しみです!ニセコに行く機会があればおすすめです。

ニセコ蒸留所公式ホームページ

メスカル専門バー、Bar 若林に行ってきました。

こんにちは、鎌田真理です。蒲田にあるメスカル専門のバー、バー若林に行ってきました!そもそも、メスカルは世界的にトレンド入りしているスピリッツなのですが、日本ではまだまだ知られていないかもしれません。日本でも手に入るメスカルから、日本にはまだ入っていないものまで幅広く取り揃えているバーで、とってもおすすめです!

まず、メスカル(Mezcal)とは、 多肉植物である アガベ(リュウゼツラン)を主原料とするメキシコ特産の蒸留酒の総称のこと。同じような蒸留酒にテキーラがあります。テキーラの方が知られているかもしれませんね。ではテキーラとメスカルの違いについて下記に記載します。

原料
テキーラ:アガベ・アルール
メスカル:アガベ・アルールを含む50種以上のアガベの使用可。トバラ(tobalá), トバジチェ(tobaziche), タペザテ(tepeztate), アロペーニョ(arroqueño), エスパディン(espadín)など。

製造の違い
テキーラ:原料をオーブンに入れて蒸し焼き。その後発酵、蒸留。
メスカル:地中に穴を掘って、溶岩、木、炭などど共に蒸し焼き。(←ここがスモーキーフレーバーの所以。)その後発酵、蒸留。

生産地
テキーラ:5つの州(ハリスコ、ナヤリ、タマウリパス、グアナファト、ミチョアカン)メスカル:9つの州(オアハカ、ドゥランゴ、サカテカス、タマウリパス、グアナファト、サンルイスポトシ、ミチョアカン、ゲレロ、プエブラ)

 メルカルは冒頭でもお話した通り、世界ではトレンドでも日本ではまだまだ。メルカルを豊富に取り揃えているバーも多くはないと思います。でもこのバー若林の若林さんを訪ねれば、たくさんの情報がありますから、頼もしい。ちょうど先月一か月ほど、メキシコに滞在していたので、お土産話や、ハンドキャリーした商品もどっさり!本当にメルカルに対する情熱がすごいです。

レンズ向けるとこのポーズ。親しみやすい若林さん
Vortice Soda with Lemon Peel

最初の一杯は若林さんがアンバサダーを務めるメスカル、ヴォルティス(Vortice)のソーダ割り+レモンピール。シンプルにメスカルを爽やかにいただきます。

今日のお通しはおでん。寒い日にほっこります。
メスカル・テイスティングセット

 メスカルをいろいろ試したいということで、提供していただいたメスカル・テイスティングセット。右から左に向けて上級者の味わいになっていきます。

右:LA LUNA ESPADINCILLO (ルナ・エスペンディンシーヨ) ミチョアカン州 (Michoacan)で作られている。比較的静かなフレーバー。ミントのようなハーブ感を感じる。
中:CHINGA QUEDITO オアハカ州(OAXACA)で作られている。とってもスモーキーなフレーバーが際立った、力強い味わい。
左:CASA TISHISHA  オアハカ州(OAXACA)で作られている。 伝統的な製法を取り入れていいるらしく、乳酸菌のような醗酵した香りのあるまろやかな味わい。でも上級者向け。例えばチーズの中でも羊(シェーブル)やブルーチーズが特徴的な味わいがあるような感じです。確かに今まで味わったことのないメスカルでした。
メスカルペアリングフルーツ

 そして、メスカルと一緒に楽しむことができるプレートをいただきました。

左:パイナップル+グサーノ(芋虫)、4種の唐辛子、お塩を混ぜたもの*自家製
メキシコのお酒って、パイナップルとの相性いいですよね。そこにスパイシー(唐辛子)、ソルティー(塩)と、グサーノ由来の土っぽさてが加わって、メスカルと合わせると完全に口の中でカクテルが仕上がります。どのメスカルとも◎。

中:青りんご+オハサンタHoja Santa(オハ・サンタ)*自家製
オハサンタは英語で Piper auritum 又は、 Mexican pepperleaf と言われており、アメリカからメキシコ原産で葉の大きさは30cm以上にもなるそうです。胡椒の一種で、ハーブ感よりスパイス感があるようなフレーバー。とはいえ、葉を使用しているので、ピーマンのような青いフレーバーもありますので、青りんごとの相性は良い。当然ながらメスカルとの相性もよし。テイスティング3種のなかでは、一番右のルナとの組み合わせが好きでした。

右:オレンジ+SAL DE GRASSHOPPER(サルデグラスホッパー)
先ほどのグサーノ(芋虫)も衝撃的だったのですが、出ました!グラスホッパー。かっこよく言っておりますが、バッタです。バッタと言えばエビのような甲殻類フレーバーを想像したのですが、全く癖がなく、どちらかというとナッツ類のようなフレーバーのお塩です。真ん中の見た目からエビのような味を想像していましたが、香りを裏切らずナッツ類のような風味でした。 真ん中のメスカル(CHINGA QUEDITO)の強めのスモーキーさとの相性が良かったです。 

サルデグラスホッパー以外は、若林さんのお手製ですから感服いたします。

grasshopper salt バッタ塩

 メスカルを使用した現地でも提供しているカクテルは何かと伺うと、ピナコラーダのメスカルツイストだそうです。今回は若林さんレシピのマルガリータのメスカルツイスト、メスカリータをいただきました。隠し味に唐辛子を漬け込んだメスカルをほんの少しくわえたレシピで、スモーキーとスパイシーが上手に融合した味わいでした。スノースタイルにもHoja Santa(オハ・サンタ)を加えています。

メスカリータ

 そして、日本でも世界でもたくさんの方に愛されている、ネグローニ。これのメスカルベースのメスカルネグローニもいただきました。
ベースに選ばれたのは若林さんがアンバサダーをしているブランド、50度のヴォルティス、カンパリ、ラ カンティニ ヴェルモット ロイヤル ルージュ。そして、ガニッシュはレモンピール。メスカルの味わいを最大限に活かされたネグローニ。美味しかったなあ。。。(幸せのため息)

Mezcal Negroni
左からLa Quincinye Vermouth Royal Rouge, Campari, Vortic 50%

 久しぶりのバーライフでワンアンドオンリーな体験をさせていただくことができました。メスカルのこと全く知らなくても大丈夫。バーテンダーの私でもバックバーに並んでいるメスカルわかりませんでしたから。是非、みなさんもこの世界を体験してみてください。

BAR若林公式サイト